浦和家庭裁判所川越支部 平成10年(家)1684号 審判 1999年7月08日
申立人 X
相手方 Y
未成年者 A
主文
1 相手方は申立人に対し、金36万円を支払え。
2 相手方は申立人に対し、平成11年7月1日から未成年者が満20歳に達する月まで毎月金4万円をいずれも毎月末日限り支払え。
理由
1 申立の趣旨
相手方は申立人に対し、未成年者の養育費として毎月相当額の金員を支払え。
2 当裁判所の判断
(1) 本件記録及び家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば、次の事実が認められる。
<1> 申立人は、○○○○年○月○日フィリピンのナヴォタス市で出生し、地元の高校を卒業した後18歳で来日し、東京・熊本・香川・埼玉などのスナックでホステスとして稼働した。申立人は、平成7年2月、長野県伊那市で働いていたときに相手方と知り合い、同年6月から相手方と同棲し妊娠した。相手方は、「妻と離婚して申立人と結婚する」といい、平成9年1月23日には胎児認知をした。申立人は、平成9年3月にフィリピンの実家に戻って出産することとし、相手方もフィリピンまで付き添って行った。そして、その際、2人でマニラ市役所に行って婚姻届を提出しようとしたが、受け付けられなかった。
<2>申立人は、同年○月○日に未成年者を出産したが、相手方は、未成年者出産後も6回位フィリピンの申立人らを訪れた。そして、相手方は、その都度、申立人にお金を置いていったので、申立人は、それらのお金(合計約100万円)を生活費としていた。ところが、平成10年5月の電話を最後に相手方からの連絡が全く途絶えたことから、申立人は同年8月に未成年者を連れて来日した。
<3> 申立人は、知人の家を転々としながら相手方と話し合いをし、同年10月23日には、長野家裁伊那支部に内縁関係解消の調停の申立てをしたが、相手方は一度も出頭しなかった。そこで、申立人は、その申立てを取り下げて12月3日当裁判所に本件審判を申し立てた。申立人は、平成10年12月9日から家賃月4万円のアパートを自分で借りて、未成年者と2人で暮らしており、スナックで稼働して月平均11万6926円の収入を得ているほか、児童扶養手当4万2130円を受領している。
<4> 相手方は、肩書住所地(職場)でa建築を自営しており、4人ほど大工を雇っている。相手方には、妻及び3人の娘(23歳から27歳)がいるが、同人らは相手方の住民票上の住所地(肩書本籍地)に居住しており、相手方とは別居している。相手方は、家庭裁判所調査官の再三の調査呼び出しにもかかわらず一切応じないため、収支の状況は不明であるが、現在も建築業を自営しているのであるから、収支が全く無く分担能力もないとはいえない。そこで、総務庁統計局の個人企業経済調査年表(平成9年度)を基に相手方の営業利益を推計して算出することとすると、控えめに見積もっても381万7000円となる。
(2) 本件は、申立人母がフィリピン国籍、相手方父及び未成年者が日本国籍を有する養育費請求事件であるところ、相手方の住所地国が日本であるから、日本に国際裁判管轄権があることは明らかである。そして、扶養義務の準拠法に関する法律2条により、扶養権利者(未成年者)の常居所地法である日本法が準拠法となる。
そして、以上の事実によれば、相手方は、未成年者の父として養育費を負担すべき義務があるというべきであるので、その負担額について検討する。
養育費の算定に当たっては、相手方が調査に応にず、資料の提出を拒否したため、前記のとおり公的な統計資料を基に相手方の収入を推定することとし、生活保護基準額比率法によれば月額4万2906円、労研総合消費単位比率法によれば月額3万8579円となるので、その他本件で認められる一切の事情を総合考慮すると月額4万円とするのが相当である。また養育費支払いの始期については、申立人が内縁関係解消調停を申し立てた平成10年10月とすることが相当である。
3 よって、相手方は申立人に対し、養育費として、金36万円(平成10年10月から平成11年6月分までの合計額)を即時に、平成11年7月1日から未成年者が満20歳に達する月まで毎月4万円を毎月末日限り支払う義務があるから、主文のとおり審判する。
(家事審判官 雨宮則夫)